肝炎は世界各地でみられ る病気です。ウイルス性肝 炎は、沈黙の臓器・肝臓を 攻撃するため、いつの間に か感染し自覚症状ないまま 進行して気付いた時には重 篤化しているという事も多 く、年間１４５万人の命を 奪っている疾病として世界 的健康課題のひとつになっ ています。予防には、世界 的レベルでの正しい知識と 予防意識の啓発が必要との 観点から、２０１０年のW HO総会で、肝炎啓発キャ ンペーンのための記念日 「世界肝炎デー」が制定さ れ、２０１１年より実施さ れています。
　５年目となる今年のテー マは、“Prevent hepatitis: A ct Now 肝炎予防、 今すぐ行動を”です。日本 でも、７月28日を「日本肝 炎デー」とし、この日を含 む１週間 (今年は７月27 日〜８月２日) を「肝炎週 間」として、各地で様々な 啓発キャンペーンが行われ ました。
　肝炎は一般にウイルス、 特にＡ、Ｂ、Ｃ、Ｄ、Ｅ型 の５種類のウイルスが原因 で起こります。その他の肝 炎の主な原因はアルコール の過剰摂取や一部の薬剤の 使用で発症すると云われて おります。
　また、他のウイルス感染 が原因で肝炎が起こること もあります。他のさまざま な感染症や疾患によって、 ときに肝臓の小さな領域で 肝炎が起こりますが、この 場合には問題が発生するこ とはまれです。肝炎には経 過が短い急性肝炎と、最低 ６カ月は持続する慢性肝炎 があります。
　Ａ型肝炎は、主に便を介 して経口感染し、通常は感 染した人が手をよく洗わず に食品を調理するなど衛生 状態の不良が原因。保育所 や介護施設で、感染者の汚 物が付着したおむつに介護 者や子供が触れて広がるこ ともあります。未処理の下 水が流れこむ水域でとれた 貝類や甲殻類は汚染される 場合があり、生食により感 染することもあります。
　Ｂ型肝炎は、Ａ型肝炎に 比べて感染しにくい。主に、 滅菌されていない針の再使 用で起こり、複数人で薬物 の注射針を共有している場 合や、刺青を彫る針やワク チンの注射針が再利用され ている場合にみられます。
　Ｃ型肝炎の感染経路は、 薬物を注射する針の共用が 最も多いとされ、症状や経 過の予測は困難です。最初 は軽症で症状がないことも 多いが、肝機能は数カ月か ら数年にわたって周期的に 変動します。Ｃ型肝炎の約 75％が慢性化するといわ れ、通常なら慢性Ｃ型肝炎 は軽症に推移します。しか し感染者の20〜30％は肝硬 変を発症し、一旦肝硬変を 起こすと肝臓癌へと進行す ることがあります。40歳の Ｃ型肝炎ウイルスのキャリ ア（持続感染者）集団を70 歳まで適切な治療をせずに 放置した場合、10〜16％の 人が肝硬変に、また、20〜 25％の人が肝がんに進展す ると予測されています。
　薬物が原因の場合は、使 用を中止します。進行性の 慢性Ｂ型肝炎およびＣ型肝 炎の場合には、通常は抗ウ イルス薬を投与します。
　Ｂ型肝炎では通常、エン テカビル、アデフォビル、 ラミブジン等を経口投与し ますが、インターフェロン を併用する場合もありま す。また、Ｂ型肝炎では薬 物治療を中止すると再発し たり重症化する可能性もあ るので、生涯にわたって抗 ウイルス薬の使用が必要に なります。Ｃ型肝炎の場合、 ペグ化インターフェロンア ルファとリバビリンの併用 が有効です。最近では、ダ クラタスビル錠とアスナプ レビル軟カプセルの併用が ２０１４年秋に保険適用さ れ、新たにソフォスブビル 錠（リバビリン錠との併用） が５月から発売されており ます。さらに、ソフォスブ ビルと・レディパスビの配 合剤も発売の見通しです。