薬の瓦版
薬の瓦版=平成27年3月9日= 第15号

以下、テキスト版です。

大田区薬剤師会        薬の瓦版            2015年(平成27年)3月9日(月曜日)     (ほぼ週刊)
発行:大田区薬剤師会
東京都大田区中央3−1−3
アルカディア中央1階
医薬品の誤飲事故に注意
高齢者による誤飲
 先週は子どもの誤飲につ いてまとめましたが、今週 は高齢者の誤飲についてお 届けします。
 高齢者の場合、薬を包装 ごと飲みこんでしまい、喉 や食道などを傷つけたとい う事故が後を絶たない。被 害の未然防止・拡大防止の ため、あらためて注意を喚 起する。
 薬の包装は、プラスチッ クにアルミなどを貼り付け たPTP包装シート(以下 「PTP包装」という)と呼 ばれるものが主流である。 PTP包装は、塩化ビニル もしくはポリプロピレンと アルミ箔もしくはポリエチ レンラミネートフィルムを 貼り合わせた包装であり、 1960年代より導入さ れ、現在も薬剤包装の主流 となっている。薬を清潔な まま取り扱うことができ、 錠剤が包装の外から見える ため、管理のしやすさなど から広く普及している。
 薬を1錠ずつに切り離せ ない構造が主流となってい るが、消費者がハサミで1 錠分に切り離してしまい、 これが誤飲しやすいサイズ であるため、事故につなが っている。
 切り離されたPTP包装 を誤飲すると、角が鋭利で あるため、人体内部を傷つ けることがあり、部位によ っては穿孔するおそれがあ る。痛みなどの症状が表れ るまで誤飲したことに気付 きにくく、誤飲を自覚せず 体調不良などで検査して も、PTP包装の素材はX 線を透過してしまうため、 発見されにくい。発見が遅 れると重症化するおそれも ある。
 高齢者で事故が目立つ現 状などから見て、消費者側 が誤飲を防ぐには限度があ り、製薬業者は過去から、 誤飲しても体内で溶ける素 材やX線を透過しない素材 などを含めた製品側からの 安全策の研究を進めている ようであるが、薬の品質を 保ちつつ事故防止につなが る有効な手段は見つかって いないようである。
PTP誤飲をしないために
 PTP包装には誤飲事故 防止のために、横か縦の一 方向にのみミシン目が入っ ている。過去には1錠ずつ 切り離せる包装が主流であ ったが、誤飲事故防止のた めに切り離せないように改 良された経緯があるので、 1錠ずつに切らないことが 望ましい。
 1回分ずつの薬を用意し たい場合は、「一包化」を 活用する事を考えたい。「一 包化」はPTP包装から薬 を取り出し、服用時点毎に 粉薬のような小袋に分包す ることである。袋ごと飲み 込むには大きいので、中身 を取り出して服用できる。
 「一包化」の希望は、主 治医あるいは、薬局で相談 して頂きたい。
専門家の見解
 PTP包装の誤飲 は、飲み込んだことを 気付かない場合がほと んどであり、腹痛など の症状が出てから病院 へ行くことが多い。腸 などの消化管を突き破 った場合(穿孔)は腹 膜炎を起こす。特に大 腸の穿孔の場合には、 腹腔内に便汁が流出 し、敗血症などの合併 症を引き起こすため状 態が悪くなることが多 い。
 間違えて飲み込んだ としても、食道を通過 して他の器官にPTP 包装がひっかからなけ れば、便と一緒に排出 される。PTP包装の 角が体内を穿孔しない 限りは、包装の成分と しては悪さはしない。 PTP関連の論文を見 ると、癌の症例が見ら れるが、誤飲したから 癌になるというわけで はない。ただ、癌があ って消化器などが狭窄 していると、飲み込ん でしまったPTP包装 が通りにくくなってし まい、体内に留まる可 能性がある。
 飲み込んだPTP包 装を体内から取り出す 医療行為には高度なテ クニックが必要であ る。
 ◆埼玉社会保険病院 外科副院長 橋本光正 医師



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